北舘洋一郎 インタビュー

北舘洋一郎 インタビュー

25年のパトロールの報告

中学生の頃から、街のファッションパトロールが大好きで、いろんなショップをまわっていました。雑誌でやるリサーチがすでに生活の一部だったんですよね。そのせいか、大学時代に手伝った雑誌の仕事もすぐにこなすようになり、『Boon』『Number』などの雑誌でファッションエディター、スポーツライターとしての活動をしていました。当時はメディアに関する仕事をずっとやっていきたいと考えていました。ターニングポイントとなったのは、マイケル・ジョーダンの2回目のスリーピートのとき。こんな人はスポーツ界では二度と出てこないなと、これは生で見ておかないといけないなと。それを現地で見て、伝える仕事をやりたいとシカゴに渡り約5年間、マイケル・ジョーダンの取材していました。アメリカでの活動の中で、スポーツメーカーやアメリカのブランドの人達とつながり、日本でのブランディグを相談されるようになり、それを仕事にしていくようになりました。Championが日本ではじめて別注をした企画を手がけたことがきっかけで、自分でモノ作りをしたり、お店をもってみようと思いました。その延長線上で今までいろんなプロジェクトを行ってきました。何かを発信する仕事なので、そこには人という対象がいて、その人に結果的に喜んでもらえるようなことをしていきたいです。喜び方はひとそれぞれだけど、その人達がそれをみて、ポジティブにむかっていってくれればいい。HATCHでも、僕のセレクトを通して、そんなことを思っていただけたら嬉しいです。



マイナーがメジャーを揺さぶるようなことをしていきたい

自分のゆかりもない、知らない人が作っている、均一的ものを買ったり食べたりすることがおもしろくないと思うようになって。だったら、自分のまわりに才能のある人がたくさんいるから、その人達をうまくつなげて、その人達がやっている仕事を何か違うものに転換できたら、そこに自分の仕事としての価値があるなと感じました。あえて、僕のフィルターを通すことで、受け手が新しさを感じてくれたら、それは嬉しいなと。そんな思いから、ライフスタイルよりのショップ『The Tastemakers & Co.』を南青山にオープンしました。自分はアーティストではないので、成果としては残るものは無形なものです。今はないけど、10年前のあれがよかったなーと思ってもらえるような、記録より記憶に残るような仕事をしていきたい。いろんな海外のブランドの仕事をしてきたこともあり、考えていることはグローバルだけど、僕自身の動きはローカル。目指したいのはマイナーメジャーです。マイナーなんだけどメジャーの人達を揺さぶるようなことをしていきたい。



作り手の思いが質感で伝わってくるかどうか

モノを選ぶ一番の基準は、質感です。アジというか。作り手の思いが質感で伝わってくるかどうか。今回セレクトするものは、そんな作り手の思いが伝わってくるようなモノばかりです。僕の身近にいる人で、自分で立ち上げて、10年と継続して続けている人だったり、モノだったり。仕事=自分の人生になっている、自分のライフワークになっている人たちの作品であり、そこには作り手の魂がこもっています。大企業が3ヶ月で作れてしまうモノを、一人の人間が5年かけて試行錯誤して作っているモノの方を僕は伝えていきたい。完璧度でいったら100%ではないかもしれないけど、そこには、作り手の思い、ストーリー、魂がはいりこんでいるのを感じてもらいたい。



25年のパトロールの報告

おなじモノでも、伝え方が違えば、そのモノが全く異なって見えるということは、かえられない宿命です。そのモノをどう伝えていくかで、そのよさがひきだされるなら、これはもっとやるべきと思うので、HATCHの人がセレクトするという行為は面白いなと思います。また、分母のでかい世界に進まないと生き残っていけないIT業界の中で、あえて逆流しているような気がして、それもいいなと。生活必需品で絶対に必要なものは大手通販サイトで売るべきですが、一部の人向けに作ったモノを、誇大に表現して、マスのひとへ理解してもらう行動をそういうとこでやるべきではないと思います。そこにはねじれが存在するし、ナチュラルではない。作り手の本意とは違うとこにいってしまうのではないかと思います。そういうものを表現する場所がHATCHみたいなところなんだと。これまでの25年のパトロールを通して、作り手の思い、魂のこもった、本当にいいと思ったモノだけを紹介していきます。


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